クローズアップ OB & OG インタビュー

2013年3月卒業 生物科学課程専攻

アズワン株式会社 バイオサイエンスグループ

2015年10月

武 綾香 Take Ayaka


Q.1 どんな仕事をしていますか。
入社3年目で、バイオサイエンス分野向けの研究機器販売に特化した専門営業部に所属しています。
海外から輸入した研究用途の装置を、大学や企業の研究員の方へご紹介します。
価格帯でいうと、数百万から数千万円の高額機器の取り扱いがメインです。
学術的な知識と営業力の両方が求められますが、研究のお役に立ちたいという思いで日々勉強中です。
Q.2 営業職として、どのような業務を担当されていますか。
私が担当する機器のご用命があれば、全国各地を回ります。
機器や装置のカタログだけでは伝わらない魅力をお届けできるよう心掛けています。
大学の先生方や企業の研究者の方へ「ご興味のありそうな論文で使われています」というような情報をご提供しますので、事前の情報収集は大事です。
また、商談の状況に応じて、海外の開発元との折衝も行いますから、英語(でのやりとり)は、もう必死!です。
留学経験はありませんが、価格交渉やレポーティング、納期確認といった実務面で英語と格闘しながら、担当する機器を日本市場へ広めることが私の役割です。
Q.3 理系を目指したきっかけは?
中学生くらいからサイエンスに興味がありました。ヒトが健康体でいられる仕組み、たとえば、体温を調整するための命令系はいくつあるのだろう?とか、生きるために維持されて当たり前に作用している体内機構には、どんな仕組みがあるのか、知りたいと考えていました。
Q.4 中学生の頃の興味がそのまま大学での研究に結びつきましたか。
形を変えて結びついたと思います。大学では、触媒の機能を持たせた抗体をX線結晶構造解析という方法を用いて機能解析しました。自然界のルールを一つ一つ解明していく面白い研究ですが、実は、興味の対象は他にありました。今思うと大変失礼ながら、指導教官に、やりたくない!とお伝えすることも、一度ではなかったです。自分から遠ざかろうとしても、なぜかその手法で進めるテーマが回ってくる。最初は本当に泣く泣くやるのですが、もうあきらめて真剣に向き合ってみようと腹をくくると、不思議なことに「面白い!知りたい!」という好奇心を持って研究を進められました。加えて、当時あれだけ避けようとしていた研究テーマで身に着けたバックグラウンドが、今の仕事では大いに役立っています。
その経験から、自分の志はしっかり持ちながら、周りの勧めや状況に素直に従ってみることも大事だと思えるようになりました。今はまだ自分の置かれている状況の意味がわからなくても、ゆくゆく、自分の力となることがありますね。
Q.5 どんな就職活動でしたか。
完全に迷走していました。様々な業界の方にお話を伺いましたし、教授からも何社か企業をご紹介いただきましたが、ドクターへ進むかどうかも悩んでいました。
サイエンスに関わっていたいとは思いながらも、一生研究を続けていくのは自分には向いていないように思えたので、推薦で研究職にチャレンジするかどうかには葛藤がありました。道半ばで私が会社を辞めてしまうと、後輩がその会社には入社しづらくなるとの思いもありました。
私の出身研究室の教授は、日本国内はもちろん、世界各地を飛び回るお忙しさでしたが、学生ひとりひとりの未来について考えていてくださり、温かく相談にのってくださいました。本当に感謝しています。教授室で語り合わせていただいた時間は、貴重な思い出です。
その中で、次第に、営業職が視野に入ってきました。実際の採用フローでは、学部を3年間で早期卒業して大学院へ進んだことも、企業の人事担当者へ教授からポジティブにお伝えしていただき、先輩・OBOGの方のサポートもあって、入社することができました。
Q.6 研究を一生の職とすることを、当時はご自身でどのように捉えておられたのですか。
企業でもアカデミックでも世界に伍して道を切り開いていくのは、並大抵のことではないと感じていました。企業にもよるとは思いますが、研究テーマを自由に選択できるわけではない環境において、与えられた研究テーマに対して結果を出す。その結果も、世の中にインパクトを与えるレベルであることが求められ、もちろん世界と勝負できるのかが問われる。あるいは、アカデミックで自ら研究テーマを探索する場合でも、世界に伍して道を切り開いていく厳しさは並大抵のことではないと感じていました。
いずれの場合も高いレベルで研究を推進していく探究心と独創力が求められる、と考えていました。
Q.7 今、営業職で輝いておられますね。どんな時に仕事のやりがいを感じますか。
「武さんに問い合わせて課題が解決した」「競合製品の情報が役立った」「予定よりも早く意義深いジャーナルに論文を掲載できた」というお言葉をいただける時です。
研究者の優秀な頭脳は、ぜひとも研究に集中していただいて、効率をあげて実験を進めるために、装置にできることは装置に任せていただきたいと思っています。
私はしっかりとそこをお手伝いして、役立つ情報をご提供したいです。
情報力で世界に負けたくないですね。
Q.8 就職先を選ぶ時に重視したことや入社を決心したポイントは。
重視したのは、その仕事を好きになれそうかどうかですね。
入社を決心したポイントは、大阪府立大学のOGの方が、本当にいきいきと働いておられたことです。
入社1年目や2年目でも意見を言える空気があり、いざと言う時の上司のサポートもあって、入社後はとても充実しています。
Q.9 ご自身のどんなところが評価されて入社が決まったと感じていますか。
学部を早期卒業したという点を、これまでひとつのことに打ち込んで成果を出した事例と捉えて頂けたのではと感じています。とにかくベストを尽くすという意気込みが伝わったのではと。それで、研究とは異なるフィールドでも、営業職として一生懸命にやるのではないかと判断していただけたのかもしれません。
面接では嘘なく率直にお話しさせていただいたので、私の頑固さやクセの強さも目立ったと思いますが、自分自身を本当に知っていただいたうえで、ご判断していただけたと感じています。
Q.10 職場であこがれる先輩社員はどのような人ですか。
直属の上司を尊敬しています。経験に裏打ちされた自信を持っておられて、相手から信頼を得ることに長けている方だなぁと、素直に憧れます。感情的に物事を考えることがなく、とても的確な判断をなさるのですが、私のような小娘の意見も聞いてくださって、新たな視点や率直な評価を頂けます。正解はないといつも教えられ、自分のスタイルを早く確立するよう、助言をいただいてきました。
Q.11 夢に近づくために心がけていること。
チャンスを求めて一歩踏み出すこと。自分への投資は惜しまないことです。
今は、とにかくスキルアップしたいという気持ちが強く、海外仕入先との交渉をより深く担当する部署に興味があります。
夢はあります。今はまだ胸に秘めつつ、ライフサイエンスの最前線からビジネスパーソンとしてのスキルを積んでおきたいです。
Q.12 職場でどのようなスキルや能力を求められますか。
スキルは英語ですね。世界の最新情報を集めるには英語は必須です。
能力では、信頼される力。相手から信頼される力をもっている人は強いです。特別な能力が必要なわけではなく、時間を守る・レスポンスが速い・相手の話をちゃんと聞くなど基本的なことが習慣になっていることが必要だと思います。
Q.13 学生時代を振り返って、どのような経験をしておくことが大切と思いますか。
学部やバックグラウンドの垣根を越えて、いろんな人と友達になっておくことでしょうか。
損得抜きに人脈を広げる時間をつくることが大切だと思います。
特に先生方は学生とのお話や交流をウェルカムと思ってくださっているので、ぐいぐい行くことですね(笑)。
それから、「学び続ける」姿勢を身につけるのは強みです。フィールドが変わっても通用しますので。