クローズアップ 教員 インタビュー

物理科学課程 / 物理科学専攻

分子磁性研究室

2016年10月

准教授 山口 博則 Hironori Yamaguchi

Q.1 担当しておられる授業を教えてください。
初年次ゼミナール、物理学実験、演示学生実験Ⅱです。
Q.2 授業での特徴的なお取り組みがあれば教えてください。
授業の時間内で教えられる内容は限られています。学生それぞれが主体的に学ばなければ、高度化した現代の科学を十分に理解することはできません。ですから、主体的な学習のきっかけとなるように、学生たちの好奇心を刺激するような授業内容を心掛けています。今学んでいることはどのような最新の科学技術と結びついているのか、どのような発展性が期待されるのかなど、宇宙、物質、生命に至る幅広いサイエンスに絡めて物理の面白さを伝えています。
Q.3 ご専門の研究内容、研究テーマを教えてください。
物性物理学を専門としており、様々な新物質の合成に取り組んでいます。宇宙はとてつもなく大きく、人類にとっては未知のものばかりです。現代の科学では宇宙の遥か彼方に行くことはできません。遠い宇宙のどこかにあるかもしれない物質を、この地球上で創り出しています。それらがどのような未知なる性質を持っているのかを調べています。
Q.4 ご自身の研究を通して、社会にあるどのような課題の解決を目指しておられるか、教えてください。
新物質の開発は材料開発でもあります。今日の科学技術を支えている様々な電子機器には、様々な材料が使われています。例えば磁性体は、パソコン、自動車、その他の様々な家電に使用されています。新しい材料の開発は、産業・社会の土台を新しい物に取り替えて、エネルギーや資源などの様々な環境問題を解決することにつながります。
一方で、物性の根本的な理解を目的とした基礎研究としての側面も重要です。大規模な災害などで壊滅的な被害が起こらないようにするためには、科学技術全般におけるさらなる発展が必要です。すぐに役に立つかどうかにとらわれることなく、私たちの安心安全なより良き未来のために、日々の地道な基礎研究によって科学の可能性を探求していく必要があります。
Q.5 研究室で大切にされているモットーがあれば教えてください。
私の研究グループでは主体性を大事にしています。同じ事をやるにしても自らの意思で行うのと、強制的にやらされるのとでは大きく違います。最初に研究の目的と方向性をしっかりと示して、あとはそれぞれのペースで伸び伸びと研究を進めてもらっています。個々のモチベーションも高まり、結果的によい成果に結びついています。学生たちが楽しく充実した研究生活を送れるように計らうことも指導者の務めだと思っています。
また、私たちの目的が“科学の発展”であることは常に研究グループ全員に意識させるようにしています。もちろん個々の経験や勉強も重要なことの一つですが、そればかりでは自己満足で終わり、組織としても機能しなくなってしまいます。大学という知の拠点で研究に携わる者としての自覚を持たせています。全員で協力して合理的に研究を進めていくことが、“科学の発展”を担う者としての責務だと考えています。
Q.6 研究心得のようなもので、学生に伝えたいことを教えてください。
偉そうなことを言える立場ではないのですが、バランスが大事だと思います。次々と新しい可能性を探っていく軽快なフットワークと、しっかりと地に足を付けて検証と考察を進める堅実性の両方を、ケースによってうまく使い分けて行く必要があると思います。何かに固執し過ぎては重要なことにたどり着くことができませんし、上辺だけを見ているだけでは重要なことは見えてきません。
Q.7 研究が成功したときを振り返られて、大切なことを教えてください。
良い研究成果は予想していたものとは違った形で現れることが多いと思います。ですから、迷ったらまずはやってみること、よく分からない結果が得られたらまずはしっかりと考えてみること。自分の思考、知識、経験を過信しすぎないことが大事なのかもしれません。
Q.8 研究に失敗したときを振り返られて、大切なことを教えてください。
研究は基本的には失敗の連続です。研究成果は多くの失敗を基に達成されるので、失敗は前進でもあります。失敗の行きつく先に成功が無かったとしても(よくありますが)、可能性を検証したことは大いなる前進です。そのことをしっかりと意識して、いかなる結果が得られようとも、冷静に論理的に次に何をするべきかを考えることが大切だと思います。
Q.9 サイエンスの世界に興味をもったきっかけ、子供の頃や青年時代のエピソードを教えてください。
幼少の頃より生物学者である父が色々なサイエンスの話をしてくれました。よく大学に連れて行かれ、実験室にほったらかされたのを覚えています。自然とサイエンスに興味を持つようになりました。
Q.10 研究者の道を志したきかっけを教えてください。
最先端の科学に触れるとワクワクします。もっとすごいものを見たい、そのためにはもっと科学を発展させたい、と思うようになりました。ある程度大きくなってからは、単なる好奇心だけではなく、科学技術の重要性も考えるようになりました。自然災害によって成すすべもなく命が奪われていくのを見ていられないと感じました。人類が安心安全で平和に暮らしていけるように、研究者となって科学の発展に貢献したいと思うようになりました。
Q.11 壁にぶちあたった時に、ご自身の支えになった事、人の言葉などを教えてください。
困難に直面して何とかしようと頑張っていると、様々な言葉が湧き出てきます。人それぞれに自分に合った言葉を見つけて成長していければよいと思います。
Q.12 二〇代に薦めたい書籍を教えてください。
  • 日本物理学会編「宇宙の物質はどのようにできたのか」
  • 小出昭一郎著「量子論」、「量子力学(Ⅰ)」、「量子力学(Ⅱ)」
  • 山下和男、播磨裕著「物理化学の基礎」