キュリーとラジウムと放射線と

開催日:2018年12月26日(水)

講 師:理学系研究科、放射線研究センター 准教授 川西 優喜 先生

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南海電車を眺めながらのアカデミックカフェ

ここはまちライブラリー@大阪府立大学。自然光がふんだんに入り、時折通る南海電車が程よく静寂を緩和してくれる空間は読書にはもってこい。そんな会場でアカデミックな好奇心を満たしてくれるイベントが開催されました。それが今回で50回を迎えるアカデミックカフェです。

今回は生物科学専攻・放射線研究センター 准教授の川西 優喜 先生にキュリー夫人と放射線についてお話していただきました。

お話いただく前に参加者の皆さんにイベントテーマに沿ったオススメの書籍をご紹介頂くなど、参加者同士のコミュニケーションをはかり、会場の雰囲気もより和やかに。

会場が温まったところで、先生の登場です。1日過ぎてしまったもののクリスマスシーズンということで、突如、先生がサンタ帽を被ると子供達は大はしゃぎ。講演や講義とは全く違う雰囲気で先生のお話が始まりました。

キュリー夫人ってどんな人?

皆さんご存知、キュリー夫人。ノーベル賞受賞など華やかな功績は知られていますね。そんなキュリー夫人の生い立ちや研究業績を楽しく丁寧に解説いただきました。

まずは、フランスで使われていた紙幣、500フランの紹介から。おもて面に実験器具、裏面にピエールとともに写るキュリー夫人、眼光鋭くこちらを見つめています。
子供達にはあまり馴染みのない紙幣でしたが、紙幣にのるぐらいの功績を残したことに、改めてキュリー夫人の偉大さを実感している様子。
夫人生誕の地、ポーランドはどこでしょうクイズなどのインタラクティブな解説で、子供達のテンションも上がりっぱなしです。

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1867年にポーランド立憲王国(現在のポーランド)の首都ワルシャワに、5人兄弟の末っ子として生まれ、23歳でフランスのソルボンヌ大学に入学。27歳の時に物理学者のピエール・キュリーと結婚。新婚旅行が自転車だったというお話は有名なんだとか。知りませんでした。
夫人が功績を残すまでの足取りを当時の日本の様子や、大学時代に住んでいたカルチェラタンの街並みを交えながら楽しく解説いただきました。

キュリー夫人の時代のヨーロッパではどんな研究が行われていたの?

そんなキュリー夫人が活躍した時代、どんな研究が行われていたのでしょうか。キュリー夫人の功績を辿る上でも重要な研究の解説に移っていきます。

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まずは、ジャックとピエールのキュリー兄弟の研究です。
彼らが1880年に発見した圧電効果で、点火しているのがライターやチャッカマンです。圧電効果とは特定の物質に衝撃を与えると放電する現象で、その現象が現れる物質のことを圧電素子と言い、カチッという音は圧電素子に衝撃を与えている音だそうです。

続いて1895年のレントゲン博士によるX線の発見です。
レントゲン博士がX線発見に至った実験をわかりやすく解説していただく前にレントゲンが実際に使っていたのと同じようなガラス管での実験が行われました。

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このガラス管は放電管とよばれ、中の空気が抜かれて真空です。放電管の根もとにはマイナスの、その反対側にはプラス電極があります。これらの電極の間に高い電圧をかけるとマイナス極から電子が飛び出しプラス極へ向かいます。最初に、この電子の流れを蛍光塗料を使って見ることができました。つぎに電子が物体に力を及ぼすことができる実験です。放電管の中には歯車があり、電圧をかけると歯車が回りながら動く様子は子どもたちの感動をよんでいました。

レントゲン博士はこの放電管を黒い厚紙で覆い、未知の線が放電管から出ていることを発見しました。数学でわからない答えのことをXとういことにちなみX線と名付けました。
この未知の線を調べるうちに人の骨や鉛に対しては不透過であることを突き止めました。これがレントゲン写真のはじまりです。

1896年にはベクレル博士がウランからもX線と同じような放射線が出ていることを発見しました。他からエネルギーを与えられなくても放射線を発生させる能力=放射能の発見です。

このようにキュリー夫人が活躍した時代では数々の放射線に関する大発見があったことを実験を交えてわかりやすくご説明いただきました。

新元素ラジウムの発見

先人の発見により、にわかに活気だった放射線の研究。キュリー夫妻はその他にも放射線を出すものがあるはず、ということで様々な物をキュリー兄弟の考案した微弱電流計で調べ始めます。
そして、1898年 新元素ラジウムを発見するに至ります。さらにその四年後に純粋ラジウムの単離に成功しました。/p>

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このラジウムの発見、あるいは
・ウランよりも約二百万倍強い放射能をもつ
・元素は変化すること(半減期)
・ひとりでに熱を出す
・がん細胞を殺す
のような物理的性質の解明は世紀の大発見となりました。
このものすごい可能性を秘めた物質ラジウムはかなり高価だったそうで、当時1g=16万ドル、現在に当てはめると、なんと、12億円にもなったそうです。1gが12億円ですよ、1gが。子どもたちもとんでもない金額に呆気にとられています。12億円もの価値があるもの、産業界がほっておきません。産業として発展(=お金儲け)させていこうという機運が起こっていくのも自然の流れ。そんな中にあって、発見者であるキュリー夫人は金言を残していました。「だれもラジウムでお金もうけをしてはいけません。それは一つの元素です、みんなのものなのです」と。胸に突き刺さりました、グサッと。

キュリー夫人や放射線についてもっと詳しく知りたい!!!

キュリー夫人の偉大さを実感させて頂いたご説明後、まちライブラリーイベントということでさらに子供たちの好奇心をくすぐるように伝記などの書籍もご紹介いただきました。

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まだ終わりませんよ。なんと、さらに、放射線を身近に感じてもらうための実験が待っていたのです。子どもたちの目はさらに輝き、サンタクロース先生の後ろを我先にと言わんばかりについていきます。たどり着いた先には何やら怪しい、黒い箱が。
そうです、放射線を見ることができる霧箱です。イギリスのチャールズ・T・R・ウィルソンという人が原理を発明した画期的装置です。子供達がちょうど覗ける高さに置いてある霧箱、周りは彼らの顔で埋まってしまいました。
アルコールとドライアイス、黒い底板にLED、単純な機構の黒い箱の中で放射線が生き物の様に飛び交います。感動します。
蒸発したアルコールが充満する箱の中を放射線が飛んだ時だけ、液体のアルコールの粒が集まってできる雲の筋として、放射線の飛跡が現れるのです。

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霧箱の感動をひとしきり味わった後は放射線を測ります。
元の席に戻り、最初からデスクの上にあった見慣れないケース。触りたくて仕方なかった黒いケース、いよいよ開封の儀です。
GM計数管、ベータちゃんという装置が現れました。
そもそも私たちは常に自然放射線を浴びながら生活しているのだそう。自然放射線とは、宇宙や大地、食べ物や空気中から放出される放射線のことで、ほんの微量なので健康には影響が出てこないのだとか。
ベータちゃんは身の回りのものの放射線量を測れる装置で、放射線が一つ飛び込むたびにピッとなります。

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メーターの単位、cpm(count per minute)は1分間あたりに飛び込んだ放射線の数で表されます。
子供達がさっそく、ありとあらゆるものにベータちゃんをかざして行きます。ケースに同梱された肥料や乾燥昆布、鉱石などでは収まるはずもありません、会場にある本や持参した筆記用具などにかざして行き、ピッピッピッピッピッピっと高い甲高い電子音で会場が満たされます。
サンタクロース先生も「興味の赴くままに色々測って」っと子供達を煽ります。
ひとしきり計測し終えたところで、サンタクロース先生、とっておきを計測させてくれました。ランタンのマントルです。これにベータちゃんをかざすと・・・・ものすごい勢いでピピピピピッとなり続けます。自然放射線にしてはすごい線量で、cpmのメーターが振り切れています。もちろん、健康に影響がでない程度だそうなのですが、すごい勢いです。子供達も「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ」と興奮気味です。
とっておきの計測の盛り上がりも収まらぬうちにサンタクロース先生の講演が終了となりました。それでも集合写真の準備の間に子供達からの先生への質問は絶えません。今日感じた感動や好奇心をサンタクロース先生にぶつけています。サンタクロース先生には一日遅れのプレゼントと言わんばかりに質問に対して丁寧にお答え頂きました。

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