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多田 悦章
堺市立堺高等学校
サイエンス創造科前科長

「ヘテロ」大学院GPの成功を祈って

堺市立堺高等学校
サイエンス創造科
前科長 多田 悦章

    大阪府立大学大学院理学系研究科が4倍(公立大学に限ると約8倍)の激戦の中、文部科学省より平成20年度「大学院教育改革支援プログラム」に採択されたことは、優秀な研究者を育成しようとする大学の先生方の熱意と独創的な企画力の成果であると敬服しています。
    さて、私がこの大学院GPプログラムのアドバイザリーボードの一員として参加することになった経緯を述べさせていただきます。私の勤務する堺市立堺高等学校は、100年の歴史をもつ堺市立工業高等学校と80年の歴史をもつ堺市立商業高等学校を統合し、理数科としてのサイエンス創造科を新設して平成20年4月に開校しました。サイエンス創造科はその名の通り理科・数学に興味関心の高い生徒が入学してくることから、大阪府立大学理学系研究科の教授によるプロフェッサーズセミナーを年3回実施するなど、いわゆる高大連携事業を実施しています。
    その際、研究室の大学院生も何名か同行し、実験の指導や自分たちが研究している内容の紹介など、より幅広い高大連携をめざしています。実際に、セミナー後に実施したアンケートでは、教授による講演に負けないくらい好評であるという結果が出ています。これは高校生にとって年齢の近い大学院生は、お兄さんやお姉さんといった感覚で話しやすさや親しみを感じるからかもしれません。ただ、われわれ高等学校の教員から見ると、教授の講演と大学院生のそれとは、格段の差が見受けられます。こうした中、平成20年12月に、高大連携の窓口をしていただいていた生物科学科の上田純一先生から、柳先生がプロジェクトリーダーをされている大学院GPのアドバイザリーボードの話をいただきました。
    高大連携というと大学側より高校側の受けるメリットが大きい場合が多いのですが、真の高大連携とは、双方にとって同等のメリットをもつものでなければなりません。高校側では、「大学院生のプレゼンテーションの機会を提供すること」、「大学院生のプレゼンテーション技量や生徒への対処方法などを教員が評価すること」などができます。こうしたことを考えた結果、アドバイザリーボードを引き受けさせていただくことにしました。
    このとき、思い出されたのが前寺岡研究科長の言葉です。堺高等学校開校の準備をしていた平成19年の夏、堺市教育委員会の指導主事と私を含む3名の現場の教員(市教委の教育改革推進課との兼務)が高大連携についての打合せに理学系研究科を訪れました。その時、前寺岡研究科長は「現在の大学生や大学院生は発表する機会が多くないので、検討してもらいたい」との考えを提示されました。すでにこの段階で大学院教育における問題点を把握し、解決するための「ヘテロ・リレーションによる理学系人材育成」の構想を見通しておられたのだと頭が下がる思いでした。
    堺高等学校では現在までに、理学系研究科より9名の先生方と18名の大学院生による講演を実施していただいています。奇しくも、第1回目のセミナーは現理学系研究科長の前川先生でこのときだけは、先生お一人で2時間講演していただきました。その後は、先生が1時間、大学院生が1時間のパターンで実施しています。また8月には大阪府立大学で2日間にわたって理学系研究科の特別講義を実施していただき、大学院生による指導を受けています。
    今後は、大学院生に英語でのプレゼンテーションも実施していただくことができればと考えています。高校生や大学院生双方にとって有益ではないかと思います。高等学校として「大学院教育」に寄与できることは僅かしかありませんが、微力ながら貢献できることを光栄に思っています。
    最後に、大学院生の諸君、柳先生が「ヘテロ」の挨拶で述べられているように、専門知識の少ない高校生に自分たちの研究している内容をわかりやすく伝えることは学会での発表とは異なる工夫や手法が必要となってきます。「ヘテロ・リレーション」特別メニューの一つである『利休サイエンスレクチャーシップ』などの制度を有効に活用し、優れた理学系人材となることをめざしてください。