新任教員インタビュー
金属、錯体、フッ素のいいとこどりをして世の中にないものをつくろう!

理学系研究科分子科学専攻 大橋 理人(おおはし まさと)教授

大橋理人教授

理学類理学系研究科には現在、約80名の教員が在籍し、多様な研究を行っています。それぞれ教員がどのような研究をしているのか、どのような思いを持って学生に接しているか。今回は2019年4月より分子科学専攻の教授に着任された大橋 理人(おおはし まさと)先生にお話をうかがいました。

アカデミックか就職か。悩んだ末に選んだ研究者の道

「実は学生の頃は、アカデミックの世界に残ろうという考えはあまりなかったんですよ」と大橋先生。

大橋理人教授

国内の某企業に内定し、博士論文も書きはじめていたドクター(博士過程)3年の秋、国内外の学会で懇意にしていただいていた別の研究室の先生から突然、「僕の研究室に来ないか」との誘いがありました。

「正直、どうして自分にこんな話が・・・と驚きました。内定ももらっていたので、やはり就職するべきかなとも考えたんですが、当時の恩師から、そんなチャンスはなかなかないよと言われ、自分の進路をもう一度よく考え、悩みに悩んだ末、アカデミックの世界に身を投じる決心をしました」。

研究者として大阪大学大学院工学研究科にて約12年間過ごし、大阪府立大学にはこの4月から着任。10月からは学部の3年生が研究室に配属され、4年生と一緒に研究をはじめます。

「ちょうどこの10月から新しく3年生が7名入ってきたので、4年生と合わせると9名になりました。いよいよ、チーム大橋の本格スタートかなと思っています。予算もとらなきゃいけないし、年々責任は大きくなって大変なこともありますけど、フレッシュな研究室だからこそできることもたくさんあると、やる気に燃えています」と大橋先生。

金属、錯体、フッ素のいいとこどりで、世の中に役立つ化合物をつくる!

大橋先生

大橋先生の主な研究テーマは、錯体化学、有機金属化学、有機フッ素化学の3つ。

●錯体化学
「錯体化学の【錯体】とは、金属原子と非金属の原子が結合した化合物のことです。例えば、人間の血液中に含まれるヘモグロビンは、体内の酸素運搬をつかさどる重要な役割を担っていますが、このヘモグロビンも鉄を含む【錯体】のひとつです」。

●有機金属化学
錯体のなかでも金属元素と炭素原子が直接結合している錯体を【有機金属錯体】と呼びます。
「2010年にノーベル化学賞を受賞したことでも有名な【クロスカップリング反応】は、パラジウムという金属を使うことで炭素原子と炭素原子を自在に結合させることのできる有用な反応で、これまで合成が不可能だった医薬品や機能性材料をつくりだすことに成功しました。これまで達成が困難とされてきた反応も、うまく【有機金属錯体】を使うと実現できる可能性があるんです」と大橋先生は熱く語ります。

●有機フッ素化学
「フッ素も皆さんご存知のとおり、虫歯予防やフライパンのテフロンコーティングなどに使われている身近な元素です。フッ素原子は、他の原子には見られない特異な性質を持つことから、その特性を利用して風邪薬、湿布薬などの医薬品や、液晶、有機ELといった機能性材料にも使われています。フッ素と炭素の結合を含む【有機フッ素化合物】を上手に使えば、もっと世の中の役に立てるものがつくれるはずです」。

「錯体」「有機金属錯体」「有機フッ素化学」と聞き慣れない言葉に、つい難しい研究内容をイメージしがちですが、私たちの暮らしに役立つ身近なものを研究対象にしていることがわかると、親近感がわいてきます。

ずばり、金属、錯体、フッ素の3つのいいとこどりをしよう!有機金属錯体を使って世の中の役に立つフッ素の入った化合物をつくろう!というのが大橋研究室です。

僕らはチーム大橋!多様性とチームワークを大切に。

大橋先生

普段の授業は、有機化学演習1、有機化学1(予定)、分子構造解析1、分子科学課題実験、
有機化学特論(予定)を担当している大橋先生。特に学部の2年生、3年生には研究室に入るための準備期間として、有機化合物をつくるための基礎的な内容を教えています。

「何をやるにしても基本は大切だし、大事なことは、学んだことを知識として使いこなせるようになることです。必ずしもすべてを丸暗記する必要はありません。頭の片隅に置いておくことで、[これ、前にやったな!][そういえば、先生、あのとき言っていたな!]と思い出して、教科書なり論文を振り返るきっかけになればいいし、そうした基本の積み重ねが後になって生きてくると思います」。

大橋研究室では特に多様性とチームワークを大切にしていて、学生がいつ質問に来てもいいように、大橋先生の教授室のドアはいつも開けっ放しにしているとか。

「ひとつの研究テーマでもいろんな切り口、いろんなアプローチ方法がある。学生にはチーム大橋の一員として、それぞれバックグラウンドの違う指導教員や先輩後輩、いろんな人とコミュニケーションをとりながら研究を進めていってほしいです」。

今日できることは明日に残すな!

大橋先生

そのためにも、普段から研究の大きな方針は伝えるものの、あとはなるべく学生の主体性に任せるようにしていると大橋先生。

「自分で課題を解決したという経験は、将来、どんなシチュエーションでもきっと役に立つと思います。ただ、アプローチは任せるけど、必要な準備は前もってちゃんとしてほしい。現実にはなかなか難しいとは思うけど、「今日できることは明日に残すな」という気持ちで取り組めるといいかな。人に言われてやるというのではなく、研究活動を通して主体性と協調性を身につけてほしい。そのふたつを持てれば、どんなフィールドにいっても必ず活躍できるはずです」。

学生と教員との距離が近く、風通しの良い研究環境が整っている大橋研究室。今後、有機化学の研究に大きく貢献されることが期待されています。

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