オープンキャンパス2010 理学部
高校生のためのサイエンスフォーラム
場所:大阪府立大学中百舌鳥キャンパス 学術交流会館(C1棟)(キャンパスマップ)
1日目 8月7日(土)10:30-11:40
『計算機で探る分子の世界』
分子科学専攻 准教授 麻田 俊雄
私たちの身の回りには、色素や電化製品など生活を豊かにする物質が数多く存在します。これら全ての物質は分子や原子からできていて、化学反応を起こすことで元とは違った新しい物質を作りだすことができます。
一見規則性が無いかにみえる化学反応も、実はミクロの世界を支配する物理法則によって、分子や原子を組み換えているにすぎないのです。
ここでは、計算機で化学反応の世界を探る方法について分かりやすく解説します。
『集合の濃度』
情報数理科学専攻 教授 加茂 静夫
ものの集まりを集合といいます。
例えば、7と-1.8と√2 の三つの数の集まりAは集合です。
この集合を A={ 7, -1.8, √2 }で表します。
この場合、「7は集合 Aに属す(所属する)」とか「7はAの要素である」といい、7∈Aで表します。-1.8と√2 についても同様です。
実数全体Rも、実数全部の集まりですから集合です。
要素が有限個からなる集合を有限集合と、要素が無限個からなる集合を無限集合といいます。 集合Aは有限集合です。Rは無限集合です。有限集合はその要素の個数を非負整数で表せます。例えば、集合Aの要素の個数は 3 です。
そこで、有限集合に関しては、要素の個数の比較ができます。即ち、有限集合をふたつ持ってくると、「こちらの方が要素の個数が多い(少ない)」とか「同じ個数ある」となります。
無限集合達に関してはどうでしょうか?ふたつの無限集合をとってきたとき、同様の比較はできるのでしょうか?無限集合の要素の「個数」という言い方には微妙に違和感があるため、無限集合に配慮して、要素の個数のことを「濃度」といいます。
この講演では、無限集合の濃度を解説します。
2日目 8月8日(日)10:30-11:40
『川虫の眼で河川環境を調べる』
生物科学専攻 教授 谷田 一三
水俣病やイタイイタイ病に見られるように、1960年代までは日本の河川は水質汚濁がひどく、ヒトへの健康被害も起きるような状態もあった。現在はそのような強い汚染は少なくなったが、水質事故や低濃度の化学物質が引き起こす水環境の劣化はなくなってはいない。河川にすむ生物、とくに河川昆虫(川虫)は、河川環境のモニタリング(監視)に、非常に役に立つ。水質汚濁だけではなく、川の物理的な環境劣化の評価にも使える。フォーラムでは、川虫の生態と河川生態系を紹介するとともに、川虫を使ったバイオモニタリングの考え方と技術を紹介する。
『新しい自然観の構築:確率現象に基づく進化発展の物理学』
物理科学専攻 教授 田中 智
物理学は、自然現象の中にある法則を発見することを目的とする学問です。はたして、森羅万象の移り変わる世界の中に、唯一絶対に変わることのない宇宙全体を支配する掟(法則)などがあるのでしょうか?
古代ギリシャ時代から、人類は絶対的に変わることの無い確かなものに憧れ、唯一の確かな真理を追い求めてきました。ある人は、それが決して朽ちない黄金への夢であったりもしました。
ところで、もし、宇宙に掟(法則)があるならば、全てのものはそれに従って整然と変化していくはずです。まるで、時計仕掛けの精密機械のように。
ニュートンが1686年に提出した運動の法則は、この仕掛けを明らかにしたように見え、絶賛を持って迎えられました。しかし、すぐに、このことが私たちをいっそうの不安に陥れてしまいました。
一体、私たちはただ単に仕組まれた時計仕掛けの精密機械なのでしょうか?私たちに自由な意志はないのでしょうか?
一方、1859年に、ダーウィンは『種の起原』を著し、突然変異という確率現象が、進化発展に非常に大切であることを明らかにしました。
さらに、20世紀になると、決定的にすべてが移り変わるのではなく、確率的に物事が決まっているという新しい考え方が力強く産まれてきました。 量子力学と、統計力学に根ざした複雑系の科学です。
このような物理学の根底を流れる基本的な自然観についてお話しします。