理学部宇宙物理学研究室    上海天文台に研究協力
-府大の知と堺の精密加工技術で宇宙の謎に挑む-

理学部宇宙物理学研究室が、上海天文台に研究協力をいたしました

写真1 上海25m望遠鏡 (C)中国科学院上海天文台

写真2 完成したホーン(大阪府大にて)

【概    要】
大阪府立大学理学部宇宙物理学研究室は、国立天文台(東京都三鷹市)と共に中国上海天文台の電波望遠鏡(写真1)の新しい観測計画に積極的に参加しています。
上海天文台からの依頼を受け、昨年10月から、同天文台の25メートル電波望遠鏡と世界の望遠鏡群(※1)との間で行われるVLBI観測(※2)に使用する6.7GHzホーンの設計製作を行ってきましたが、このたび完成、2010年2月に同天文台に移設を行います。

【研究協力内容】
「口径26mの上海電波望遠鏡に搭載されるフィードホーン
(※3)の設計、製作」
設計:理学部宇宙物理学研究室
製作:「村上精機株式会社」(堺市堺区山本町)
形状:直径400mm×長さ1200mmの円筒状(写真2)

今回の協力依頼は、同研究室が、ALMA(※4)やVERA(※5)等の電波天文学機器開発の経験と高い実績を有していることが評価されたものです。

【フィードホーンの役割】
宇宙からのメチルアルコール6.7GHzスペクトルを受信するために用いられます。
このメチルアルコールは太陽の10倍程度の大きな質量の星が誕生する領域において検出されており、メチルアルコールの物理状態を詳細に観測することにより、まだ謎が多い星の生成機構についてさらに理解が進むと期待されています。

【更なる協力関係を目指して】
搭載を予定している上海電波望遠鏡は、日本各地(山口大学、国立天文台、茨城大学等)の望遠鏡とVLBIという干渉計を形成することが予定されており、VLBI観測の特徴である高分解能特性を活かすことができます。
今回の堺市の企業の精密加工技術を活かしたフィードホーン製作により、上海天文台との協力関係を大きく前進させるとともに、各地の電波望遠鏡と協力した天文、宇宙の解明の進展が期待されます。

 

 

用語解説

上海天文台と干渉実験を予定している望遠鏡は、日本では、VERA、山口32m鏡や茨城32m鏡などがある。さらにヨーロッパの望遠鏡とも計画されている。

VLBI(Very Long Baseline Interferometry):複数のアンテナで同一天体を同時に観測し、データを相関することで、非常に高い観測分解能を得ることが出来る。分解能は相関する望遠鏡間の距離が大きいほど高くなり、国内だけでなく国外の望遠鏡と観測することは高分解能観測の点でも重要である。

フィードホーン:電波望遠鏡で集光された宇宙からの電波を、受信機に受け渡しを行う重要なパーツ

ALMA:Atacama Large Millimeter/submillimeter Arrayの略。日米欧3極が中心となって、南米チリに建設しているミリ波サブミリ波干渉計。日本は、この望遠鏡に搭載される150GHz帯、500GHz帯、800GHz帯受信機の開発などを行っており、大阪府立大学宇宙物理学研究室は150GHz帯、800GHz帯受信機の開発に参加。

VERA:VLBI Exploration of Radio Astrometryの略。日本の国立天文台が岩手水沢、東京小笠原、鹿児島入来、沖縄石垣に口径20mの電波望遠鏡を配し、干渉計観測を進めている計画である。府大は、この干渉計に搭載した6.7GHz帯受信機の開発および観測に参加している。

<参考>
大阪府立大学 理学系研究科 
宇宙物理学研究室ウェブサイト

村上精機株式会社ウェブサイト

問い合わせ先
大阪府立大学 理学部 物理科学科
小川英夫 TEL 072-254-9726
大西利和 TEL 072-254-9727