オープンキャンパス2011 自然科学類
高校生のためのサイエンスフォーラム

 

場所:大阪府立大学中百舌鳥キャンパス 学術交流会館(C1棟)(キャンパスマップ

 

1日目 8月6日(土)10:30-11:40

 

『21世紀の課題と分子科学:自然に学ぶ
                                        マイクロ空間での物質生産』
柳 日馨 先生

20世紀は人類が初めて大量生産を果たした時代であった。
化学品の製造においてもスケールアップを前提としたバッチ型の生産様式が当然とされてきた。しかし、時に大規模製造設備が爆発事故を起こすときには環境汚染も含めその被害は甚大なものとなる。できれば化学品の製造装置はコンパクトである方が良い。
バッチ型化学反応は撹拌装置を備えた反応釜で行うが、フロー型化学反応はパイプを通した液体の流れの中で反応を行う方法である。
数百ミクロンの流路を基本とするマイクロフロー型反応プロセスに変換することができれば、反応容器は小さいだけに万が一の事故の場合にも被害を最小限にくいとどめることができ、熱効率も良く無駄なエネルギーも使わなくて良い。
そのようなマイクロ空間で物質生産が本当に出来るのであろうか。答えはイエスである。地球上の生物の中で巨大な製造設備を有するのは人類だけであり、生物は細胞を増産する中で「ものづくり」をしてきた。
物質製造の「巨大化信仰」を見直し、人類も自然に習うときが来ている。微細な加工技術の急速な進展がもたらしたマイクロリアクター(マイクロ反応装置)を用いたフロー型の物質製造の展望をその歴史的意義と共に紹介する。

 

 

 

 

『再生医療を支える細胞培養技術について』
森 英樹 先生

私たちの体は、細胞と細胞が作り出した生体分子によってできた様々な組織や臓器から構成されています。
これらの細胞は一つの受精卵から始まり、細胞分裂、分化を経てできたものです。
分化する前の未分化な細胞を幹細胞と呼びますが、近年、生体組織から取り出した幹細胞を生体外で増殖させたり、特定の機能をもった細胞に誘導したりする細胞培養技術の目覚ましい進歩によって、それらの技術を損傷した生体組織の機能を復元させる、いわゆる再生医療へ応用することが期待されています。
この講演では、細胞培養技術を中心に最近の再生医療に関する試みについて紹介します。

 

 

 

2日目 8月7日(日)10:30-11:40

 

『分子の国の不思議な磁石』
細越 裕子 先生

磁石と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
私たちの身の回りには、たくさんの磁石が使われています。
磁石といえば鉄に代表されるように金属元素を思い浮かべるかもしれません。
実は金属元素を含まない、C, H, N, Oといった元素から構成される有機化合物で磁石を作ることができます。
ここでは、磁石とは何か、そして有機化合物で磁石を作るにはどうしたらよいか、わかりやすく説明します。そのうえで、有機化合物でどのような磁石ができるのか、従来の磁石との違いついて、紹介します。

 

 

 

 

『どのようにして食べてはいけない魚を見分けるのか?
   ―バイオテクノロジーを利用した
      シガテラ毒素の微量検出法の開発―』
円谷 健 先生

珊瑚礁海域で頻発する食中毒「シガテラ」は、年間5万人もの中毒患者が発生しており、魚介類による世界最大の中毒といわれています。
シガテラ中毒の予防のためにもシガテラ毒をもっている魚を見分ける方法の開発が望まれています。
今回のサイエンスフォーラムでは、シガテラ毒を認識する抗体を利用してシガテラ毒素をもっている魚を見分ける方法について紹介します。